ナースメイドイズミン #1-2

前回のあらすじ

隣の事務所に呼ばれた泉とPが、小さくなった藍子の世話を引き受けたよ。

P「さて……」

泉「土地勘ある人いなくなっちゃったけど大丈夫かな?」

P「まぁ対処できないことが出てくればメールすれば教えてもらえるんじゃないかな」

泉「まあそれもそうだね。藍子ちゃん、何して遊びたい?」

あいこ「わたし、ぬりえがしたいです!」

泉「塗り絵……。塗り絵?どこにあるんだろう?」

P「ちょっと引き出しの中とか探してみるわ、泉は本人からどこにあるか教えてもらってくれ」

泉「了解。藍子ちゃん、塗り絵ってどこにお片付けされてるかわかる?」

あいこ「えっとね、壁の棚のところ!」

泉「壁の棚だって」

P「ここの棚は壁にしかないな……」

泉「どの壁かわかる?」

あいこ「ここー」

泉「これ?」

あいこ「うん!」

ガラララ

泉「えっと……これかな?これだね」

あいこ「いろえんぴつもいっしょに入れてるの!」

泉「ほんとだ」

泉「はい、これで塗り絵の用意はそろったかな」

あいこ「ありがとうございます、いずみちゃん!」

P「よし、じゃあ俺は仕事してるからあとは泉に頼んでいいか」

泉「わかったわ」

P「とはいってもそこのデスクにいるから何かあったらすぐわかるんだけどな」

泉(これまで藍子さんのことはラジオくらいでしか知らなかったけど、ちっちゃい頃からゆるふわな人だったのね)

あいこ「〜♪」

泉「わあ上手……」

あいこ「うふふ、でしょー?」

泉「これは……秋の花なのかな?」

あいこ「うん!これがキキョウでしょ、これがコスモス、あとこれがヒガンバナ!」

泉「へえ、もの知りなんだね」

あいこ「お花すきですから!」

泉「もっと藍子ちゃんが知ってること私に教えてほしいな」

あいこ「うふふ、まかせてください♪ヒガンバナは毒があるから、田んぼにうえて虫よけにするの」

泉「ああ、地元の田んぼでもよく見たけど、あれってそういうことだったんだ」

あいこ「他はりんちゃんにおしえてもらったのもありますね」

泉「りんちゃん……渋谷凛さん?」

あいこ「はい!クールだけどとっても優しい子なんですよ♪」

泉「そうなんだ」

泉(渋谷凛さん。私より年もデビューも一つ上で、この会社で最初に立ち上げられた第一事務所の所属)

あいこ「ラジオに出てもらったり出してもらったりで、かおをあわせることも多いんです――」

泉(名前にたがわぬ凛とした出で立ちに芯のある強い声で絶大な人気を持つ、名実ともに揺るぎないトップアイドル)

あいこ「あれ?いずみちゃん?」

泉(私もあれくらいのアイドルになれる日が――?)

あいこ「ねえねえ、いずみちゃん聞いてますか?」

泉「あっ、はい何ですか!?」

あいこ「もー、まだわたしがしゃべってるんですよ?」

泉「ごめんなさい、ちょっと考え事してた」

あいこ「つぎは聞いてくれなきゃダメですよ」

泉「はい、ちゃんと聞きます……」

あいこ「よろしい♪」ニパー

P「どうした、泉が平謝りするなんて珍しい」

泉「あ、プ、P?」

P「仕事が一段落したらそっちはどうしてるかなと思ってお茶入れて持ってきたんだが、やっぱり小さい子の相手は慣れないか?」

泉「うーん、慣れないっていうよりは、集中できてなかっただけかも」

P「ふむ?」

泉「……P」

P「ん、どうした?」

泉「……私、トップアイドルになれるよね?」

P「ああ、なれる。いや、俺がきっとして見せる」

泉「……!ありがとう!」

P「おう。……悩みか?」

泉「ううん、今スッキリしたところ!」

P「そうか、それはなにより」

泉「ホント、Pは信じさせてくれるわね」

あいこ「いずみちゃんはトップアイドルになれますよ」

泉「藍子ちゃん?」

あいこ「そんな気がするんです」

泉「ふふっ、ありがとうね」ナデナデ

あいこ「〜♪」

ポンッ

泉「藍子……さん?」

藍子「あら?こんにちは泉ちゃん」

泉「こんにちは、戻ったってこと……なのかな?」

藍子「はい、戻ったみたいですね♪」

泉「P!藍子さんが元に戻ったよ!」

P「お、本当か?」

藍子「あっ、ニューウェーブのPさんもこんにちは!」

P「ああ、こんにちは。今日はお邪魔してます」

藍子「ああそんな、私のせいでお呼び立てしてしまって」

P「いえいえ、こちらとしても頼っていただけるのは嬉しいことなので」

藍子「……ふふっ」

P「……ハハハ」

泉「どうしよう、藍子さんが元に戻ったなら私たちがいる理由はなくなっちゃったけど――」

藍子「えっと、私、泉ちゃんともっとお話ししたいです……」

泉「うん」

P「まぁ、高森さんがそう言われるんなら、そんなすぐに帰ることもないんじゃないか?」

藍子「!」パアッ

泉「そうだね!ありがとう、P」

藍子「ありがとうございます♪」

P「じゃあ俺はまた向こうのデスクにいるから」

泉「うん」

***

P(あの二人、案外相性がよさそうだったな)

P(……ちょっと高森さんのPさんが帰ってきたら相談してみよう)


この記事は、大石泉すき Advent Calendar 2020 12日目の記事です。

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